新幹線お掃除の天使たち
いつもお世話になっている『ZENBI』さんの取材で株式会社JR東日本テクノハートTESSEI(以下、テッセイ)の奥田雅宏様を取材させていただきました。
テッセイさんは内藤功さんの『新幹線お掃除の天使たち』で紹介され、その後もハーバード大等のMBAコースの教科書に取り上げられ一躍有名になりました。
取材後にテッセイさんの話をすると、皆さん「ああ、あの新幹線清掃の…」という反応ですので、本当に知名度が高いのだなと感じています。
今回は撮影だけでなく執筆もおこないましたが、記事の書き出しはこんな感じです。
“1車両あたり約7分。JR東日本の東京駅で新幹線清掃を行う株式会社JR東日本テクノハートTESSEI(以下、テッセイ)のスタッフが、車両清掃にかけられる時間である。1列5席を約12秒で清掃するため1席あたりにかけられる時間はわずか2.4秒。この2.4秒の間に、座席前テーブルを拭き、座席の埃を取り、ひじ掛けを下げ、ブラインドやカップホルダーを上げ、座席背面の背網をチェックしなければならない。
その動きはまさに神業であり、過去に取材した米国のメディアはテッセイのことを「ミラクル(奇跡)」と表現した”
記事の中で「2.4秒」と書いていますが、実際にその動きを目の当たりにすると、本当にすごかったです。
撮影に同行してくださったテッセイの社員さんから「動きが速すぎて、他の媒体さんも2,3回撮影します」と仰っていましたが、わかります。
専門的な話で恐縮ですが、これらの写真はISO6400、1/500秒で撮っていますからね…。
それ以下ではブレちゃうくらい速いです。
清掃業のモチベーション管理
執筆の際に私自身が気をつけたのがテッセイさんが評価されているのは「清掃技術」と「スタッフのモチベーション管理」の2軸であるという点です。
2.4秒という数字がキャッチーだと思い清掃技術から記事は書き出しましたが、欧米の大学が注目しているのは後者の「モチベーション管理」についてです。
なぜ3K(きつい、きたない、危険)と呼ばれる現場で、スタッフたちがこれだけのモチベーションを保てているのか?という点です。
その点については、当時改革を推進した矢部輝夫さんが各種媒体で語っていますが、要はスタッフの価値軸を変えたということだと私は思いました。
「新幹線清掃業」から、新幹線を利用するお客様の旅の思い出をサポートする「トータルサービス業」へ。
これが矢部さんが掲げた方針です。
ただし、こうして文字にすると美しい施策に聞こえますが、カメラマン業とともにコンサルティング業も行っている弊社としては、これがいかに難しいことか、よくわかります。
記事には書けませんでしたが、おもてなし創造部の部長が立ち話で
「メディアに取り上げられてから様々な企業さんが視察に来てくれます。そして、皆さん何かこう、ボーンみたいな施策を期待して来られるんです。しかし、そんなのはないんです。ジワジワと地道にやって今の状態があるんです」
と仰っていました。
嘘偽りのない、この一言がすべてだと思います。
と同時に、現在弊社がコンサルティングし「サービス業」への転換を図っている企業さんでも「劇的な変化なんて求めない。ジワジワやるんだ」という腹を決める力をこの一言からいただいています。
お気に入りの写真
テッセイさんでは、自分たちの職場を「新幹線劇場」と呼んでいます。
過去に取材に来たタレントの山口もえさんが「大きな窓越しに外から見られているから、劇場みたい」と言ったことがきっかけで、いつしかスタッフの方が自分たちの仕事を「新幹線劇場」と呼び出したそうです。
その呼称を象徴する写真が撮りたいな、と思って、カメラを構えていたら、たまたま撮れたのがこちらの写真です。
まさに演者と観客がいる「新幹線劇場」の瞬間です。
編集の方にも「どうか、この写真を大きく使ってください」とお願いし、紙面で大きく使っていただきましたが、演者である「TESSEI」の文字に一発で気が付く人は少数派でしょう。
日芸で報道写真を専攻していた頃、ゼミの先生に「お前の写真は説明が過ぎる。そんなものは読者は求めていない。一発でメッセージが伝わる写真でなくては駄目だ」とことある毎に注意されていましたが、説明が過ぎる写真が好きな癖はいまだに抜けません…。
無言のおもてなし
早いものでこの「おもてなしに生きる」シリーズも4月号まできました。
これまで取材させていただいた方々に共通するのは、そのおもてなしです。
何を当たり前のことを、と感じるかもしれませんが、カメラマンという職業は「所詮カメラマン」的な扱いを受けることは珍しいことではありません。
しかし、4号通して、皆さん本当に心温まる対応の方々ばかりで「おもてなしというのは口だけでは達成できないのだな」と言葉でなしに勉強させてもらっています。
テッセイさんの取材前から取材後までの対応は本当に神がかっており、そういう意味でも大変勉強になりました。
ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。
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