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『ZENBI』 3月号 陣屋 宮崎知子様

フォト・パートナーズ株式会社 売上を上げる写真 MBAカメラマン 中小企業診断士

ITで旅館の悩みを解消する

3月の話になってしまいましたが、「ZENBI」の取材で旅館陣屋の宮崎知子様を撮影させていただきました。

「着物にmacのピンクのノートパソコン」という画作りからわかるかもしれませんが、陣屋さんは旅館業にITの力を導入し経営を再建した企業さんです。

知子さんは、陣屋の息子である宮崎富夫さんの妻で、元々は旅館を継ぐつもりなどなかった、とのこと。
それが、2008年義父が他界。次いで病に倒れた義母から10億円の借金があることが告げられ、さらに富夫さんが連帯保証人となっていることが発覚したことから、女将としての人生が始まります。

しかし、経営を引き継いだ時の財務状態は、売上3億円に対して償却前利益はマイナス7000万円。
そして借入金は10億円。
時はリーマンショック後という絶望的な状況です。

しかし、富夫さんがエンジニアであったことから、独自のITシステムを自作。

そのシステムこそが『陣屋コネクト』と呼ばれるもので、こちらのシステムは『第2回日本サービス大賞』で「総務大臣賞」を受賞しています。

『陣屋コネクト』の導入後、陣屋さんの経営はV字回復を果たします。

「絶望的な状況から、ITの力で復活」であり、メディアにもこの文脈で取り上げられることが多いようですが、ただ、実際に話を聞いていた感じだと決して復活の要因はITだけではないな、と感じました。

ゼロベース思考

ちなみに、私はMBA(経営学修士)を持っていますが、論文で取り上げ、取材までさせてもらったのが偶然陣屋さんと同じく『第1回日本サービス大賞』で優秀賞を受賞した道頓堀ホテルさんでした。

修士論文を1本書いているのですから私は普通の人よりはホテル・旅館経営について詳しいですが、だからこそITだけで経営が復活することがないことも知っています。

いろいろとお話を聞かせてもらう中で、IT以上に陣屋の経営を立て直したものは『ゼロベース思考』ではないか、という印象です。
むしろIT導入の源泉がゼロベース思考というべきかもしれません。

『ゼロベース思考』とはコンサルタントの思考法の一つですが、要は文字通り「常識にとらわれず、良いと思うことをゼロから考える」ということです。

旦那さんの富夫さん、奥さんの知子さんは、それ以前に旅館業に関わっていなかったことからすべての施策をゼロベースで考えられたことが大きいように思いました。
そのことを一番感じたのが「週に2日休館してしまう」という施策です。

「平日に来るお客さんは融通が利くから」「火曜日・水曜日は稼動率が低いから」、さらに「従業員が休めるので従業員満足も上がる」という理由もあるそうですが、旅館が週に2日休んでしまうという、この英断。

業界に長くいる人にはとても思考・行動できることではないと思いました。

陣屋事件

私などは撮影前に陣屋さんを検索して諸情報を調べたわけですが、人によっては「え?陣屋を知らないの?」という人もいるはずです。

不勉強で撮影後に初めて知りましたが、将棋を指す方で陣屋を知らない人はいないそうですね。
300を超えるタイトル戦が陣屋さんで行われており、過去には『陣屋事件』と命名されるほどの事件も起きています。

それだけ由緒正しい旅館が、上記の改革を実行した、というところが最も陣屋復活のストーリーで迫力があるところでないかな、と思いました。

セレンディピティ

それ以外にも数々の常識に捕らわれない旅館立て直しの施策を聞くことができ、コンサルタントとして本当に勉強になりましたが、個人的に一番この日の撮影から影響を受けたのは、経営再建前にデザイナーさんが「社是はなんですか?」と問い、社是がないことに気付いたため、デザイナーさんが陣屋さんの強み・弱みを全従業員にヒアリングした、という話でした。

ちょうどこの時期、私も顧問契約が決まっており、次の一手をどうしようか悩んでいる時期でした。

「そうか。全従業員に直接聞く、という手があったか」と撮影しながら思い、実際に私もその後全従業員にヒアリングしました。

現在、顧問先の会社全体が良い方に変わり始めていることを感じていますが、きっかけはあの「全従業員ヒアリング」であったと確信しています。

このように、ZENBIさんで『おもてなしに生きる』シリーズの撮影を担当させてもらってから、不思議と私が悩んでいることの答えを取材対象の方が教えてくれることが頻出しています。

世の中では、こういうのをセレンディピティと呼んだりするのかもしれませんが、そういうロマンチックな解釈をしなければ、人は求めて初めてその情報に着目するだけな気がします。

「10秒であなたの今いる部屋に赤い物体がいくつあるか数えて下さい」

10,9,8,7,6,5,4,3,2,1…

「はい、それでは、部屋に青い物体はいくつありましたか?」

というやつです。

確かに目は部屋全体を見ている(赤も青も緑も黄色も見ている)。しかし、脳みそに残るのは意識した色だけ。

つまり、上記の話も「私が求めているから聞こえてくるだけ」という解釈もできます。

実際はセレンディピティでも何でもいいのですが、ただ、こうしてカメラマンとして素晴らしい話を聞く場にいられる、という事実だけはロマンチックに解釈するしかない、本当に運が良く素晴らしいことだなと感じています。

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